体外受精、実際にかかる費用はいくら?保険適用から助成金まで徹底解説
体外受精(IVF)は、不妊治療の一つとして多くのご夫婦が選択されますが、その費用について不安を感じる方も少なくありません。「実際、いくらくらいかかるんだろう?」「保険は使えるの?」といった疑問をお持ちの方もいるでしょう。
体外受精にかかる費用は、治療内容や回数、利用する施設によって大きく異なります。この記事では、体外受精の実際にかかる費用について、保険適用や助成金制度を含めて詳しく解説します。費用面での不安を解消し、安心して治療に臨むための参考にしてください。
体外受精の費用は大きく分けて2種類
体外受精の費用は、主に「保険診療」と「自費診療(先進医療含む)」の2つに分けられます。
1. 保険診療の場合
日本においては、2022年4月から不妊治療の一部が保険適用となりました。体外受精もその対象に含まれ、以前に比べて費用負担が大幅に軽減されています。
基本的な保険適用範囲:
採卵(卵子を採取する手術)
体外受精(受精させる工程)
胚培養(受精卵を育てる工程)
胚移植(受精卵を子宮に戻す工程)
凍結胚保存(初めての凍結費用、次年度以降の更新費用は自費の場合が多い)
排卵誘発剤などの薬剤費
診察料、検査費用(保険適用内のもの)
自己負担割合:
所得に応じて、3割負担となるのが一般的です。
おおよその費用目安(1周期あたり、3割負担の場合):
採卵から胚移植までの一連の治療: 10万円~25万円程度
凍結胚移植(凍結した胚を移植する場合): 5万円~10万円程度
ただし、これはあくまで目安であり、個人の状態や治療計画によって変動します。例えば、採卵数が多かったり、培養期間が長かったりすると、その分費用は上がります。
2. 自費診療の場合(先進医療含む)
保険適用外の治療や検査は、全額自己負担となります。
主な自費診療の項目:
高度な培養技術: タイムラプス培養、PGT-A/SR(着床前診断)など
特殊な受精方法: 顕微授精(ICSI)で、医師が必要と判断しない場合
反復着床不全の検査や治療: 子宮内フローラ検査、ERA検査、SEET法など
凍結胚の更新費用: 初回凍結費用以外
卵子の凍結保存(将来のための温存)
その他、保険適用外の薬剤やサプリメント
先進医療の費用:
先進医療は、国の承認を受けた高度な医療技術で、保険診療との併用が可能です(混合診療)。例えば、体外受精の過程で先進医療であるタイムラプス培養を選択した場合、その費用は全額自己負担ですが、それ以外の診察や基本的な体外受精の工程は保険適用となります。
タイムラプス培養: 1万5千円~3万円程度
ERA検査(子宮内膜受容能検査): 10万円~15万円程度
PGT-A(着床前胚異数体スクリーニング): 1検体あたり5万円~10万円程度(別途検査費用や解析費用がかかる場合あり)
おおよその費用目安(自費診療の項目を追加した場合):
保険診療の費用に加えて、選択する先進医療やオプションによって数万円~数十万円が加算されます。
複数回かかる可能性も考慮する
体外受精は1回の治療で妊娠に至るとは限りません。複数回の採卵や胚移植を繰り返すケースも少なくなく、そのたびに費用が発生します。
例えば、採卵1回で複数の胚を凍結し、その後複数回の胚移植を行うようなケースでは、総額で50万円~100万円以上かかることも珍しくありません。
費用負担を軽減する「高額療養費制度」と「地方自治体の助成金」
費用負担が大きくなる体外受精ですが、公的な制度を活用することで負担を軽減できます。
1. 高額療養費制度
医療費が高額になった場合に、自己負担限度額を超えた分が払い戻される制度です。保険適用となる治療(体外受精の基本部分など)の費用が対象となります。
申請方法: ご自身が加入している健康保険組合や市町村の窓口で申請します。
注意点: 事前に「限度額適用認定証」を申請しておけば、窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられます。
2. 地方自治体の助成金制度
国による助成金制度は廃止されましたが、多くの地方自治体(都道府県や市町村)が独自の不妊治療助成金制度を設けています。対象となる治療や所得制限、助成額、申請回数などは自治体によって異なります。
確認方法: ご自身がお住まいの自治体のウェブサイトや、不妊治療相談窓口で最新情報を確認しましょう。
例: 〇〇市 不妊治療 助成金、△△県 特定不妊治療 助成 といったキーワードで検索すると情報が見つかります。
費用以外の考慮事項:クリニック選びのポイント
費用は重要ですが、それだけでクリニックを選ぶのは避けましょう。以下の点も考慮して、信頼できるクリニックを選びましょう。
治療方針と実績: 医師の治療方針がご夫婦の希望に合っているか、過去の実績(妊娠率など)はどうか。
カウンセリング体制: 治療内容や費用について、納得いくまで丁寧に説明してくれるか。精神的なサポート体制は充実しているか。
通いやすさ: 定期的な通院が必要となるため、自宅や職場からのアクセスも重要です。
費用明細の透明性: 事前に費用の概算や内訳を明確に提示してくれるか。
まとめ:計画的な準備と情報収集がカギ
体外受精にかかる費用は、保険適用が進んだとはいえ、決して安価ではありません。しかし、高額療養費制度や地方自治体の助成金など、利用できる制度はあります。
費用面での不安を最小限にするためには、
事前にクリニックから費用の見積もりをもらう
保険適用の範囲と自己負担額を理解する
高額療養費制度の利用を検討する
お住まいの自治体の助成金制度を調べる
これらの情報をしっかり集め、計画的に準備を進めることが大切です。不安なことや疑問な点は、遠慮なくクリニックのスタッフや公的機関の相談窓口に問い合わせて、安心して治療に臨んでくださいね。