時代と共に移り変わる「美人の定義」:あなたはどの時代の美人?
「美人」と聞いて、どんな顔立ちやスタイルを思い浮かべますか?ぱっちり二重の大きな瞳?それとも知的な切れ長の目?実は、美人の定義は時代と共に驚くほど変化しています。今、私たちが「美人」と認識している姿も、遠い昔の人々から見たら全く違う感想を抱くかもしれません。
今回は、日本の歴史を振り返りながら、それぞれの時代でどんな女性が「美人」とされてきたのかを探ってみましょう。あなたの「美人のイメージ」も、もしかしたら特定の時代に影響されているのかもしれませんね!
古代(縄文・弥生時代):豊かさと生命力に宿る美
今から数千年前の縄文・弥生時代には、明確な「美人」の基準があったかは定かではありませんが、当時の出土品からそのヒントを探ることができます。
- 縄文時代: 土偶に見られるような、ふくよかな体つきは、生命力や豊穣の象徴と考えられます。食べ物が豊かでない時代において、健康でたくましい女性は、子孫を残し、集落を維持する上で非常に重要だったのでしょう。
- 弥生時代: 米作が始まり、定住生活が根付いたこの時代も、やはり健康で実り多い体つきが重視されたと推測されます。
この時代は、現代のような画一的な美しさよりも、生命力や健康さ、そして子孫繁栄の象徴としての肉体が美の基準だったと言えるでしょう。
平安時代:ふくよかで「引き算の美学」
雅な文化が花開いた平安時代は、現代の美人像とは大きく異なる特徴があります。
- ふくよかな体つき: 現代の感覚では少しぽっちゃりとした体つきが好まれました。これは、当時の貴族社会において、裕福さや教養の象徴とされたためです。
- 引目鉤鼻(ひきめかぎばな): 細く引かれた目元に、高くすらりとした鼻筋が理想とされました。
- お歯黒・引眉: 既婚女性は歯を黒く染め(お歯黒)、眉を剃って額の上の方に墨で細く描く(引眉)のが一般的でした。これは、大人の女性としてのたしなみであり、教養の高さを示すものでした。
- 長い黒髪: 床につくほどの長く艶やかな黒髪は、女性の美しさを象徴するものでした。
平安時代は、「見えない部分の美しさ」、つまり教養や品格、精神性が重視された時代でもあります。直接的な容姿よりも、着物や化粧、そして教養を通して表現される「奥ゆかしさ」が美とされたのです。
江戸時代:粋で色気のある市井の美
武士の時代が終わり、町人文化が栄えた江戸時代には、庶民の間でも美意識が発展しました。
- 細面(ほそおもて)で小顔: やや面長で小顔の女性が好まれました。
- 切れ長の目: クールで知的な印象を与える切れ長の目が人気でした。
- 「うなじ」の美: 結い上げた髪から覗くうなじは、女性の色気を感じさせる重要なポイントでした。
- 白すぎる肌はNG: 健康的な肌色が好まれ、現代のように真っ白な肌はあまり重視されませんでした。
- 口元: 当時は口紅を厚く塗るのが流行し、中でも「笹色紅(ささいろべに)」と呼ばれる、光の加減で緑色に見える口紅は大変高価で、粋な美人の象徴でした。
江戸時代は、**「粋(いき)」や「艶(つや)」**といった、洗練された色気が美人の条件でした。また、歌舞伎役者や浮世絵に描かれる女性像が、当時の美人像に大きな影響を与えました。
明治〜昭和初期:西洋文化との融合と「清純」な美
開国により西洋文化が流入した明治時代以降、日本の美意識にも大きな変化が訪れます。
- 文明開化と西洋の美: 西洋の絵画や写真を通じて、彫りの深い顔立ちや大きな目が「美しい」とされるようになります。
- 「はいからさん」: 明治後期から大正時代にかけては、袴姿にブーツ、髪をリボンで結んだ「はいからさん」と呼ばれる女性たちが新しい美の象徴となりました。知性と新しさを兼ね備えた姿が人気を集めました。
- 昭和初期の「モダンガール」: ショートヘアに洋服をまとい、自立した新しい女性像が注目されました。
この頃から、単なる容姿だけでなく、知性や自立心といった内面的な要素も美人の定義に加わり始めます。
昭和後期〜平成初期:アイドル全盛期と「可愛らしさ」の台頭
テレビやメディアが発達し、芸能人の影響力が強まったこの時代、美人の定義も多様化します。
- 聖子ちゃんカットとアイドル: 1980年代には、松田聖子さんのような可愛らしく、親しみやすいアイドル顔が人気を集めました。ふんわりとしたヘアスタイルや、丸い瞳が特徴的でした。
- トレンディドラマの影響: 1990年代には、ドラマに登場する女優さんのような、健康的でナチュラルな美しさが理想とされました。細すぎない体型や、透明感のある肌が好まれました。
- 小顔ブームの到来: 2000年代に入ると、雑誌の影響もあり、**「小顔」**が美人の絶対条件として認識され始めます。
この時代は、メディアの影響力が強く、「憧れ」としての美人像が確立されていきました。同時に、「可愛い」という概念が美人の重要な要素として加わりました。
現代(平成後期〜令和):多様性と「自分らしさ」を追求する美
そして現代。美人の定義はさらに多様化し、画一的な基準は薄れつつあります。
- ナチュラルメイクと透明感: 厚化粧よりも、素肌感を活かしたナチュラルメイクが主流です。肌の透明感や、内側から輝くような美しさが重視されます。
- 個性を尊重する美: SNSの普及により、様々な国や地域の美の基準に触れる機会が増え、「自分らしさ」を大切にする傾向が強まっています。一重まぶたやそばかすなど、個性を魅力と捉える考え方が広まっています。
- ヘルシー志向: 過度なダイエットではなく、健康的な体作りや、しなやかなボディラインが理想とされます。ジムやヨガなどで体を鍛え、健康的な美しさを目指す人が増えています。
- ジェンダーレスな美: 男性も女性も、性別の枠にとらわれずに自分らしい美しさを追求する傾向が見られます。
現代は、**「自分にとっての美しさ」や「多様性」**が尊重される時代です。SNSで発信される様々な美の形に触れることで、画一的な美人像に縛られず、それぞれの個性を活かした美しさが追求されています。
時代によって美人の定義は大きく変化し、その背景には、社会情勢や文化、技術の発展など様々な要因が影響していることがわかります。そして現代は、これまでのどの時代よりも「多様性」が受け入れられ、「自分らしい美しさ」を追求できる時代と言えるでしょう。
あなたは、どの時代の美人像に惹かれますか?